2009年06月11日
村上春樹……また買ってしまった。
新刊が出るとなぜか必ず買う。そしてすべて完読する。
記憶のかぎりでは高校時代に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。その後、文庫で『風の歌を聴け』・『1973年のピンボール』・『羊をめぐる冒険』を続けざまに読み、村上ワールドにすっかりはまる。
二十代に『ノルウェイの森』・『ダンス・ダンス・ダンス』、三十代で『ねじまき鳥クロニクル』。
四十代で『海辺のカフカ』・『アフターダーク』。
おお、いま気づいたけど『国境の南、太陽の西』を読んでいない。なぜかはわからんがたぶん見落とし。今度読もう。
短編もだいたい読んでいる(と思う)。「象の消滅」は特にいい。

さて、新刊。
『1Q84』Book1・Book2 新潮社 各1,800円也。
http://mainichi.jp/enta/photo/news/20090610mog00m200008000c.html
すでにミリオンセラーとなって書店では売り切れ。ぼくは出版されることさえ知らずアマゾンで偶然発見して速攻で予約(それでも初版は入手できなかった)。
出版に関してなんの事前情報もない。村上ファンならずとも情報飢餓状態に陥り、本を眼にすれば購入せざるを得ない状況になってしまっていた。なんともうまい販売戦略だけども、やっぱりそれは村上春樹だからこそだろう。
情報過多の時代にあって村上春樹はいまだ伝説の作家。滅多にマスコミに登場しない。かと、思っていると突然イスラエルで反戦演説。その勇気に脱帽。ますます伝説の作家になる。
http://www.youtube.com/watch?v=hDwvO64S9B4&feature=related
なんと本を読み出してからしばらく『IQ84』だと思い込んでいた。「知能指数がテーマ? それもちっと低い」という先入観で読み始めてしまった。『1Q84』は、ジョージ・オーエルのディストピア小説『1984』にオマージュを込めたタイトル。オーエルのビッグ・ブラザーに対してリトル・ピープルが登場している。
現在Book2半ばあたりまで読み進んだ。この2冊で完結なのかどうかよくわからない。
もちろん面白い。舞台は25年前のバブルが兆し始めた頃の日本。肉食系女子のさきがけとも思える青豆(あおまめ、あだ名でなく本姓)の章と小説家を志す数学講師の天吾(こちらは名)の章で語られる。自己の存在が希薄になるような種類のトラウマを抱え込んだ男女のそれぞれの物語が次第に絡んでくる。暗殺あり、過激性描写あり、パラレルワールドありと読者を飽きさせないエンターテイメントがてんこ盛り。しかし、それでもとびっきりの恋愛小説のはず(まだ読み切ってないので)。
レトリックの切れも相変わらず。思わず吹き出すようなのもある。
司法や警察関係者は憤慨するかもしれない。道路公団民営化にもそれとなく賛意を表しているように受け取られる。
カルト教団には断固とした姿勢で対峙している。名称こそ変更してはあるが、輸血を禁じるキリスト系カルトが実在の宗教団体を指していることは誰の目にも明らか。農業・牧畜業を基盤としたコミューンってのも実在している。
これは結構勇気のいることだ。場合によっては狂信者に付け狙われ、命の危険に晒されることだってある。事実、そうして命を失った人も多々いる。
宗教を否定しているわけではないだろうが、心の空虚感を安易に宗教で埋め合わせしようとすることへの警鐘ととらえられる。オウム事件を驚くほど熱心に取材し書き下ろしたノンフィクション『アンダーグラウンド』・『約束された場所で』。ここでたどりついた帰結のようなものが、『1Q84』で昇華されている。
村上春樹を論じる立場にはないが、反戦・反カルトの強いメッセージを感じる。それもそちら側にいってしまいそうな人たちを正気に戻すような作用がある。
つまり村上春樹が読まれるということは、それだけバランスを欠いた人たちがいるということだ。春樹を読んでなんとかこちら側に踏みとどまっていられる人たちが百万人近く、この日本にいる。ロシア・中国・フランスをはじめ世界中で読まれている訳だから、その数は億に迫るだろう。
村上作品が文学と称される理由はまさにそこにある。なにかが心に積もる。青春期から20年以上も読み継いで、なお同様の感動を与えられる作家はほかにいない(川上弘美はちょっといいと思う)。
ワンパターンという批判もあるが、やはり徐々に変容があり進化がある。失われた物の本質が次第に明らかになるような手応えというか、個人を超えたところにその存在を捉えようとする試みというか、これまた評論家でないのでうまく言及できない。村上春樹の評論家って誰が優れているのだろう? ちょっと読んでみようか。
村上春樹は還暦を超えた。あとどれくらい作品を贈ってくれるだろう。その後、世界は正気を保てるだろうか? 世代を継ぐ作家は現れるだろうか?
記憶のかぎりでは高校時代に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。その後、文庫で『風の歌を聴け』・『1973年のピンボール』・『羊をめぐる冒険』を続けざまに読み、村上ワールドにすっかりはまる。
二十代に『ノルウェイの森』・『ダンス・ダンス・ダンス』、三十代で『ねじまき鳥クロニクル』。
四十代で『海辺のカフカ』・『アフターダーク』。
おお、いま気づいたけど『国境の南、太陽の西』を読んでいない。なぜかはわからんがたぶん見落とし。今度読もう。
短編もだいたい読んでいる(と思う)。「象の消滅」は特にいい。

さて、新刊。
『1Q84』Book1・Book2 新潮社 各1,800円也。
http://mainichi.jp/enta/photo/news/20090610mog00m200008000c.html
すでにミリオンセラーとなって書店では売り切れ。ぼくは出版されることさえ知らずアマゾンで偶然発見して速攻で予約(それでも初版は入手できなかった)。
出版に関してなんの事前情報もない。村上ファンならずとも情報飢餓状態に陥り、本を眼にすれば購入せざるを得ない状況になってしまっていた。なんともうまい販売戦略だけども、やっぱりそれは村上春樹だからこそだろう。
情報過多の時代にあって村上春樹はいまだ伝説の作家。滅多にマスコミに登場しない。かと、思っていると突然イスラエルで反戦演説。その勇気に脱帽。ますます伝説の作家になる。
http://www.youtube.com/watch?v=hDwvO64S9B4&feature=related
なんと本を読み出してからしばらく『IQ84』だと思い込んでいた。「知能指数がテーマ? それもちっと低い」という先入観で読み始めてしまった。『1Q84』は、ジョージ・オーエルのディストピア小説『1984』にオマージュを込めたタイトル。オーエルのビッグ・ブラザーに対してリトル・ピープルが登場している。
現在Book2半ばあたりまで読み進んだ。この2冊で完結なのかどうかよくわからない。
もちろん面白い。舞台は25年前のバブルが兆し始めた頃の日本。肉食系女子のさきがけとも思える青豆(あおまめ、あだ名でなく本姓)の章と小説家を志す数学講師の天吾(こちらは名)の章で語られる。自己の存在が希薄になるような種類のトラウマを抱え込んだ男女のそれぞれの物語が次第に絡んでくる。暗殺あり、過激性描写あり、パラレルワールドありと読者を飽きさせないエンターテイメントがてんこ盛り。しかし、それでもとびっきりの恋愛小説のはず(まだ読み切ってないので)。
レトリックの切れも相変わらず。思わず吹き出すようなのもある。
司法や警察関係者は憤慨するかもしれない。道路公団民営化にもそれとなく賛意を表しているように受け取られる。
カルト教団には断固とした姿勢で対峙している。名称こそ変更してはあるが、輸血を禁じるキリスト系カルトが実在の宗教団体を指していることは誰の目にも明らか。農業・牧畜業を基盤としたコミューンってのも実在している。
これは結構勇気のいることだ。場合によっては狂信者に付け狙われ、命の危険に晒されることだってある。事実、そうして命を失った人も多々いる。
宗教を否定しているわけではないだろうが、心の空虚感を安易に宗教で埋め合わせしようとすることへの警鐘ととらえられる。オウム事件を驚くほど熱心に取材し書き下ろしたノンフィクション『アンダーグラウンド』・『約束された場所で』。ここでたどりついた帰結のようなものが、『1Q84』で昇華されている。
村上春樹を論じる立場にはないが、反戦・反カルトの強いメッセージを感じる。それもそちら側にいってしまいそうな人たちを正気に戻すような作用がある。
つまり村上春樹が読まれるということは、それだけバランスを欠いた人たちがいるということだ。春樹を読んでなんとかこちら側に踏みとどまっていられる人たちが百万人近く、この日本にいる。ロシア・中国・フランスをはじめ世界中で読まれている訳だから、その数は億に迫るだろう。
村上作品が文学と称される理由はまさにそこにある。なにかが心に積もる。青春期から20年以上も読み継いで、なお同様の感動を与えられる作家はほかにいない(川上弘美はちょっといいと思う)。
ワンパターンという批判もあるが、やはり徐々に変容があり進化がある。失われた物の本質が次第に明らかになるような手応えというか、個人を超えたところにその存在を捉えようとする試みというか、これまた評論家でないのでうまく言及できない。村上春樹の評論家って誰が優れているのだろう? ちょっと読んでみようか。
村上春樹は還暦を超えた。あとどれくらい作品を贈ってくれるだろう。その後、世界は正気を保てるだろうか? 世代を継ぐ作家は現れるだろうか?
Posted by たまゆらゆら at 01:59│Comments(0)
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