2009年07月31日
東海大地震が金融パニックを併発させる
景気が底打ちをしたという楽観報道が相次いでいる。
◆「このところ持ち直しの動き」に上方修正=月例経済報告
◆米景気後退、終わりの始まりが見られつつある可能性=オバマ大統領
◆6月の鉱工業生産、前月比2.4%増で4カ月連続上昇
◆東証大引け、約10カ月ぶり高値 回復期待で自動車や電機が上昇
雇用情勢などまだまだ悪い指標もあるが、とりあえず今回の金融不安が世界恐慌までに至らなかったといえる。これは各国政府が様々な金融財政政策を協調して行ったことによってもたらされたとも言いたげである。確かになんらかの手立てを講じなかったら80年前の世界恐慌以上の大恐慌に陥った可能性が高い。歴史から学び、同じ轍を踏まなかったことは称賛すべきだろう。
しかし、素直に安堵もできない。なにか釈然としないのである。
今回の金融不安は、実体経済の5倍を上回る額の金融バブルが発生していたと推測される。金融工学の進展によって誕生した、いわゆるデリバティブと呼ばれる金融商品が盛んにレバレッジを効かせバブルを膨らませていた。有名になったサブプライムローンもこの金融技術によって証券化され全世界にばらまかれた。
実体経済の5倍の金融商品とは世界GDP総額500兆円の5倍ということになる。その額はおよそ2500兆円。もし、この金額がまさに泡のようにはじけ飛んでいたなら、世界経済は立ち直れないようなダメージを受けただろう。もちろん、そうならなかったからこそ、景気が底を打ち回復の兆しが見え始めたのだ。
そうであるがゆえに、2500兆円に膨らんだ金融商品は、いくらか毀損したもののその大半は残存しているということである。その額が幾らなのか知ることはできないが、未だに金融バブルは放置されていると言い換えることができる。なにをもってバブルというのか、その定義は曖昧だが5倍はバブルだが4倍ならバブルでないといいきれる経済学者はいないだろう。
いまの金融状態が安定なのか崩壊寸前なのか、本当のところよくわからないのである。単に危機が過ぎ去ったばかりなので当面は安全だと経験的な判断をしているだけなのである。ところが、この危機を抑え込んだのは前述のように各国政府、特にアメリカが中心となった巨額の財政出動である。それは、かつて例のないほどの規模なのである。経験的な判断といいつつ、実は未経験な領域を多く含んでいる訳でどの程度有効な判断なのか怪しい。
なぜ、そのような無謀な判断をするのか? お金が余っているからである。行き場のないお金、年金基金やヘッジファンド、保険会社など、なにがなんでも資産運用を果たさねばならない企業・団体がなんでもいいから言い訳を欲しがっているのである。さすがに大ダメージとなったアメリカ住宅市場への投資は低調なままだが、原油などのコモディティ市場は賑わいを取り戻しつつある。株式も戻り高値を期待できる。
金融危機で縮小した金融バブルがまた膨らみ始めたのである。
今後、金融工学によって培われた証券化技術は、いままでに対象とならなかった領域に踏み出して新たな金融商品を市場に送り出すことになる。

たとえば、災害保険。ロイズなどの旧態然とした保険の仕組みでは世界規模の災害増加に最早対応しきれなくなっている。確かに証券化されれば地震保険など掛け金が引き下がるかもしれない。地震大国日本はその恩恵にあずかれるかもしれない。しかし、このような金融商品が第二のサブプライムローンにならないという保証はどこにもない。
災害保険の証券化商品は、天災さえ起きなければ高利回りの配当が得られるので投資対象として魅力的にみえる。ところがひとたび大災害が起きれば紙切れ同然となる。地震やハリケーンのような自然災害がバブル崩壊のきっかけとなりうるということである。
東海大地震が発生し、なんとか復興しようとすれども、同時期に金融パニックに陥っているような状況だとすれば、「踏んだり蹴ったり」・「泣きっ面に蜂」などという呑気な表現では済まされない。悲惨を通り越して無残な状況に追い込まれてしまう。
災害保険に限らず、証券化商品はあらゆる領域に入り込む。グリーンニューディール政策によって脚光を浴びる環境技術もその対象になっている。つまり、金融バブルはどこにでもはびこることができるようになったのである。
巨大な金融バブルが発生している以上、必ずバブルは崩壊する。そのエネルギーはむしろ増大する一方であり、それを防ぐための財政力は既に限界にある。極めて近い将来、またしても金融危機に直面することは間違いないと思う。
残念ながら今回の危機で我々はなにも学べていないのである。
◆「このところ持ち直しの動き」に上方修正=月例経済報告
◆米景気後退、終わりの始まりが見られつつある可能性=オバマ大統領
◆6月の鉱工業生産、前月比2.4%増で4カ月連続上昇
◆東証大引け、約10カ月ぶり高値 回復期待で自動車や電機が上昇
雇用情勢などまだまだ悪い指標もあるが、とりあえず今回の金融不安が世界恐慌までに至らなかったといえる。これは各国政府が様々な金融財政政策を協調して行ったことによってもたらされたとも言いたげである。確かになんらかの手立てを講じなかったら80年前の世界恐慌以上の大恐慌に陥った可能性が高い。歴史から学び、同じ轍を踏まなかったことは称賛すべきだろう。
しかし、素直に安堵もできない。なにか釈然としないのである。
今回の金融不安は、実体経済の5倍を上回る額の金融バブルが発生していたと推測される。金融工学の進展によって誕生した、いわゆるデリバティブと呼ばれる金融商品が盛んにレバレッジを効かせバブルを膨らませていた。有名になったサブプライムローンもこの金融技術によって証券化され全世界にばらまかれた。
実体経済の5倍の金融商品とは世界GDP総額500兆円の5倍ということになる。その額はおよそ2500兆円。もし、この金額がまさに泡のようにはじけ飛んでいたなら、世界経済は立ち直れないようなダメージを受けただろう。もちろん、そうならなかったからこそ、景気が底を打ち回復の兆しが見え始めたのだ。
そうであるがゆえに、2500兆円に膨らんだ金融商品は、いくらか毀損したもののその大半は残存しているということである。その額が幾らなのか知ることはできないが、未だに金融バブルは放置されていると言い換えることができる。なにをもってバブルというのか、その定義は曖昧だが5倍はバブルだが4倍ならバブルでないといいきれる経済学者はいないだろう。
いまの金融状態が安定なのか崩壊寸前なのか、本当のところよくわからないのである。単に危機が過ぎ去ったばかりなので当面は安全だと経験的な判断をしているだけなのである。ところが、この危機を抑え込んだのは前述のように各国政府、特にアメリカが中心となった巨額の財政出動である。それは、かつて例のないほどの規模なのである。経験的な判断といいつつ、実は未経験な領域を多く含んでいる訳でどの程度有効な判断なのか怪しい。
なぜ、そのような無謀な判断をするのか? お金が余っているからである。行き場のないお金、年金基金やヘッジファンド、保険会社など、なにがなんでも資産運用を果たさねばならない企業・団体がなんでもいいから言い訳を欲しがっているのである。さすがに大ダメージとなったアメリカ住宅市場への投資は低調なままだが、原油などのコモディティ市場は賑わいを取り戻しつつある。株式も戻り高値を期待できる。
金融危機で縮小した金融バブルがまた膨らみ始めたのである。
今後、金融工学によって培われた証券化技術は、いままでに対象とならなかった領域に踏み出して新たな金融商品を市場に送り出すことになる。

たとえば、災害保険。ロイズなどの旧態然とした保険の仕組みでは世界規模の災害増加に最早対応しきれなくなっている。確かに証券化されれば地震保険など掛け金が引き下がるかもしれない。地震大国日本はその恩恵にあずかれるかもしれない。しかし、このような金融商品が第二のサブプライムローンにならないという保証はどこにもない。
災害保険の証券化商品は、天災さえ起きなければ高利回りの配当が得られるので投資対象として魅力的にみえる。ところがひとたび大災害が起きれば紙切れ同然となる。地震やハリケーンのような自然災害がバブル崩壊のきっかけとなりうるということである。
東海大地震が発生し、なんとか復興しようとすれども、同時期に金融パニックに陥っているような状況だとすれば、「踏んだり蹴ったり」・「泣きっ面に蜂」などという呑気な表現では済まされない。悲惨を通り越して無残な状況に追い込まれてしまう。
災害保険に限らず、証券化商品はあらゆる領域に入り込む。グリーンニューディール政策によって脚光を浴びる環境技術もその対象になっている。つまり、金融バブルはどこにでもはびこることができるようになったのである。
巨大な金融バブルが発生している以上、必ずバブルは崩壊する。そのエネルギーはむしろ増大する一方であり、それを防ぐための財政力は既に限界にある。極めて近い将来、またしても金融危機に直面することは間違いないと思う。
残念ながら今回の危機で我々はなにも学べていないのである。
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Posted by たまゆらゆら at 06:05│Comments(0)
│政治・経済